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橋本 和幸; Wan, K. W. H. B. B.*; 松岡 弘充
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences, 6(3), p.193 - 196, 2005/12
治療に有効な核的特性を有するラジオアイソトープ(RI)をがんへ集積する性質を有する生理活性物質(モノクローナル抗体等)に標識した化合物は、がんの内用放射線治療への応用が期待されている。メルカプトアセチルトリグリシン(MAG3)は、生理活性物質のRI標識に有用な二官能性配位子の一つである。本研究では、がん治療に有効な核的特性を有するジェネレータ製無担体ReによるMAG3標識について、直接合成法及び中間体を生成させるtransfer配位子(クエン酸及びグルコン酸)を用いた合成法による標識条件(Reの還元剤である塩化スズ濃度,pH,MAG3濃度,transfer配位子濃度,担体の有無等)の違いを詳細に比較検討した。最適条件下では、いずれの方法によっても90%以上の標識率が得られた。直接法とtransfer配位子法を比較すると、直接法は、反応を窒素気流中で行い、さらに溶媒の除去操作が必要であるが、transfer配位子法では必要がない。したがって、操作上は、transfer配位子法の方が簡便である。また、transfer配位子の違いにより、標識率のpH依存性の違いや室温での反応性の違いなどが観察された。今後は、transfer配位子の違いによる抗体標識及びtransfer配位子を利用した他の有用配位子の標識に関する検討を行う予定である。
上原 知也*; 小池 美穂*; 中田 英夫*; 宮本 重彦*; 本石 章司; 橋本 和幸; 奥 直人*; 中山 守雄*; 荒野 泰*
Nuclear Medicine and Biology, 30(3), p.327 - 334, 2003/04
被引用回数:20 パーセンタイル:50.16(Radiology, Nuclear Medicine & Medical Imaging)Re標識低分子化抗体やペプチドによる癌の治療には、腎臓への放射能集積を示さない一方で、癌組織には長時間に渡る選択的な放射能集積を与える標識体の設計が必要である。そのためには、生体内で安定であり、かつ尿細管で母体タンパク質から遊離された際に、腎細胞へ取り込まれることなく、速やかに尿中へと排泄を受けるRe錯体の選択が重要である。本研究では、Cyclopentadienyltricarbonylrhenium(CpTR)をタンパク質やペプチドのRe標識薬剤へ応用する目的で,CpTR-COOH及びそのグリシン(Gly)結合体の生体内での代謝を検討した。その結果、両者はともに血漿中及び緩衝液中で安定であった。一方、マウスに投与した場合、脂溶性の高いCpTR-COOHは胆汁排泄と尿排泄を受けたが、水溶性の高いCpTR-Glyは尿排泄のみを受けた。さらにCpTR-COOHは、複数の水溶性代謝物として排泄されるのに対して、CpTR-Glyは、代謝を受けずにそのまま排泄された。これらの結果から、腎臓刷子縁膜酵素の作用で母体ペプチドから[Re]CpTR-Glyを遊離する標識試薬は、腎臓での放射能滞留の解消に有用と考えられる。
小林 勝利; 本石 章司; 照沼 久寿男; Rauf, A. A.*; 橋本 和幸
Radiochemistry, 42(6), p.551 - 554, 2000/12
がんの診断・治療用に注目されているRe,Reの供給のため製造技術を開発した。最初に、W(p,n)Re反応による製造法を述べるとともに、主として原子炉によるRe,Reの製造工程(照射、化学分離・精製、放射能測定)、装置及び製品仕様などについて報告する。いずれも安定濃縮同位体であるRe及びWOを照射し、化学分離・精製後の過レニウム酸水溶液及びW/Reジェネレータとして調製した。高価なWOの再利用と廃棄物の放射能低減のため、Re及びWをトレーサに用いた模擬ジェネレータを試作し、アルミナカラムからAlを溶離しないでWのみを脱離する条件を検討した。NHOH及びNaOHを溶離剤とし、それぞれ90%または99%以上のWを回収しWOとして調製後、放射化分析法で純度を確かめた。使用済のW/Reジェネレータについて本法を適用し、ターゲットとして再利用できるこが明らかとなった。
小川 数馬*; 小野 正博*; 藤岡 泰*; 佐治 英郎*; 向 高弘*; 小西 淳二*; 上原 知也*; 荒野 泰*; 小野間 克行
核医学, 37(5), P. 577, 2000/09
Reとbisphosphonate(BP)のひとつであるHEDPとの多核錯体であるRe-HEDPは、癌性骨転移の疼痛緩和薬剤として期待されているが、生体内での安定性が乏しいことが問題である。そこで生体内で安定なRe標識骨疼痛緩和剤の開発を目的として、BPの炭素側鎖にReと安定な錯体を形成する部位を結合した化合物を設計した。目的とする化合物は総収率2.7%で合成された。Re標識は、Re標識glucoheptonateとの配位子交換反応により行い、放射化学的純度は95%以上であった。なお、本標識化合物の体内動態については、現在検討をすすめている最中である。
野川 憲夫*; 百瀬 静香*; 宮沢 香*; 巻出 義絋*; 大橋 國雄*; 橋本 和幸; 森川 尚威*
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, 239(2), p.385 - 389, 1999/00
被引用回数:2 パーセンタイル:21.17(Chemistry, Analytical)放射性レニウム(Re,Re)は線を放出することから、近年、がん治療に有効な標識化合物の開発が行われている。Tc-ジメルカプトコハク酸(mTc-DMSA)は、腎臓のイメージング試薬として幅広く使用され、さらに、甲状腺がんなどに集積することも知られている。そこで、原研製のReを用いたRe-DMSA標識化合物の合成条件を検討し、さらにマウスにおける体内挙動を調べた。反応条件(試薬の量、pH、反応時間等)を変えてRe-DMSAの標識率を調べた。その結果、最適条件下で、95%以上の標識率が得られた。さらに得られたRe-DMSAは酢酸緩衝液中及びマウス血清中において安定であることが明らかになった。Re-DMSAのマウスにおける体内分布に関しては、骨への集積が最も高く、次いで腎臓に集積した。この分布は、Tc(V)-DMSAの分布に類似していることが明らかになった。
橋本 和幸; 吉原 賢二*
Top. Curr. Chem., 176, p.276 - 291, 1996/00
放射性レニウム(Re、Re)は、その優れた核的性質(高エネルギー線の放出、イメージングに適した線の放出など)及びその化学的性質(テクネチウムとの類似性)から、核医学の治療の分野で有望視されている放射性核種である。そこで、本稿では、核医学におけるRe標識錯体について、近年の研究成果をまとめた。内容は、以下の通りである。1.放射性レニウム(Re、Re)の製造 Re(n,)Re、W(p,n)Re、W(n,)(n,)WRe 2.骨ガンの痛みの緩和に有効なレニウム錯体(Re-HEDP,MDP)およびその他の錯体(Re-DTPA,DMSA) 3.二官能性配位子を用いた抗体標識